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「未知の情報への架け橋」ドラッグリポジショニング研究の大幅な効率化を実現

徳島大学大学院教授 石澤 啓介 氏・徳島大学病院特任助教 濱野 裕章 氏 インタビュー

徳島大学大学院医歯薬学研究部 医学域
臨床薬理学分野 教授
石澤啓介氏(右)

徳島大学病院
総合臨床研究センター 特任助教
濱野裕章氏(左)

徳島大学大学院医歯薬学研究部 医学域臨床薬理学分野では、ドラッグリポジショニング研究において、創薬支援AI「Cascade Eye」を導入しています。同研究室教授の石澤啓介氏と徳島大学病院総合臨床研究センター特任助教の濱野裕章氏に、研究における使用方法やメリット、従来の研究手法との違い、今後の活用への期待についてうかがいました。



■ 候補薬剤の絞り込みのための作業時間が飛躍的に短縮

━━━ 創薬支援AI「Cascade Eye」を導入された背景をお聞かせください。

石澤:当研究室では、既存薬を新たな疾患の治療薬として転用する「ドラッグリポジショニング」研究を行っています。この研究は従来、論文検索などを通して新規薬理作用を持つであろう候補薬剤を抽出し、それをウェットの基礎研究で検証するという方法がとられてきました。2020年のFRONTEOの論文探索AIシステム「Amanogawa」導入により、候補薬剤のスクリーニングに向けた論文検索に要する時間の飛躍的な短縮が可能となりました
 ドラッグリポジショニング研究では、様々なデータベースを基に候補薬剤の絞り込みを行います。この作業をさらに効率的に進めるに当たり、Cascade Eyeを知り、ぜひ使用してみたいと思い導入しました。

濱野:創薬研究や薬理学研究では、通常は論文などを読んでターゲット選定を行います。しかし、それは我々研究者の知識の範囲内で行う作業となり、やはりすべての論文を読めるわけではないこと、知識の幅が限られてくる点などが制約の1つとなっていました。
 一方、Cascade Eyeでは、AIが大量の論文、さらに遺伝子データベースを読み込んで、パスウェイ経路を把握した上で遺伝子のマップを形成してくれます。これを活用することで、研究者にとって未知の情報も含めてターゲット探索を行うことが可能となります。それにより、自分たちが把握しきれなかった部分や、把握しておりターゲットにしたいと考えていたが、経路の中で十分な位置づけができていなかった部分を補えるが、Cascade Eyeの大きな利点だと考えています。

━━━ 具体的には、どのようにお使いいただいていますか。

濱野:一例として、心筋炎について、悪化させる薬剤、また予防的に働く可能性のある薬剤の探索を行いました。
まず 、FAERS(FDA Adverse Event Reporting System) *1から心筋炎を予防する可能性のある候補薬を同定しました。次にCascade Eyeを使って心筋炎関連遺伝子を抽出し、論文検索により、遺伝子発現のアップ・ダウンによって心筋炎の発症に影響することが明らかである遺伝子の絞り込みを行いました。さらに、提示された原因性遺伝子を遺伝子データベースで参照し、それらの遺伝子の中で各薬剤により心筋炎を発症させる遺伝子発現変動の割合、心筋炎の発症と逆に遺伝子発現変動する割合を検証しました。
 こうした結果を、今後、基礎研究に落とし込んでいきたいと考えています。

■ 網羅的な探索により研究の幅が広がる

━━━ 従来の研究手法との一番の違いは何ですか。

濱野:従来、網羅的な遺伝子探索の手法は、マイクロアレイ解析や、GEO(Gene Expression Omnibus)*2などの遺伝子データベースでの探索に留まっていました。しかし、例えばマイクロアレイ解析は、自分で細胞や動物を用意し、さらに多くの費用をかけて検索しなければならないというデメリットがありました。またGEOは既存のデータセットしか用いることができないため、そこから漏れている情報は見られないという問題点があります。本当はより多くの情報があるはずなのに、今まではそれを見つけることができませんでした。AIの活用により、膨大な情報から網羅的に適切なターゲットを見つけられる点は非常に助かります

━━━ 実際に使用されたご感想をお聞かせください。

石澤:ドラッグリポジショニング研究にとって、原因性遺伝子の特定は非常に重要なポイントです。AIによりそれが提示されるのは大変ありがたいです。

濱野:最も強く感じているのは、研究の幅が広がったことです。今まで想定していなかったこと、自分の知識の及んでいなかったことまで知識を広げられるようになりました。「未知への架け橋」ともいえる存在です。従来は論文から探していた情報に、効率的にアクセスできるようになりました。

━━━ Cascade Eyeに追加されればより使いやすくなるとお考えの機能はありますか。

濱野:提示される遺伝子について、それが標的疾患を悪化させるのか、それとも抑制、保護するのか、また遺伝子発現のアップ・ダウンのいずれによりそれが発生するのかがわかればさらに理想的だと思います。もちろん、すべての論文が同じ方向を示しているわけではないと思いますが、どちらの内容が多いかなどがわかると参考になります。
 そのほか、薬剤情報を含めた上で、例えば「ICI(immune checkpoint inhibitor:免疫チェックポイント阻害薬)/心筋炎」などと掛け合わせて調べられると便利だと思います。現在は、各薬剤が影響する分子情報から、例えば「PD-1/myocarditis」のように解析する形ですね。

■ 「未知の情報の発見」「既知の情報の確認」の両方に役立つ

━━━ 最後に、Cascade Eyeを含め、薬理学研究・創薬研究におけるAI活用へのご所感、期待などをお聞かせください。

石澤:ドラッグリポジショニング研究では、既存薬について新たな新規薬理作用を見出していきます。AIの力を借りることにより、自分たちでは気づかないターゲット遺伝子などを持つ薬剤の情報を網羅的に見つけることができ、研究プロセスの大幅な効率化に役立つと期待しています。
 20年あまりこの研究に取り組む中で、以前は多大な労力をかけ、しかもそれが予想通りの効果があるとは限らないという経験も多くしてきました。AIは効率よくポジティブなデータが得られる重要なツールの1つだと感じています。
 このたび、私たちの研究グループが感染症領域における研究開発プロジェクトのグラントをいただくことになりました。その研究においてもCascade Eyeの活用を考えています。

濱野:AIの活用によって未知の情報を把握できることで、研究の効率は大変向上すると感じています。また、未知の情報だけでなく、既知の情報についてもAIによって裏付けを得られる点も長所だと思います。今後も研究の効率化に活用していきたいです。

*1 U.S. Food and Drug Administration(米国食品医薬品局)が運営する有害事象報告システム。https://www.fda.gov/drugs/questions-and-answers-fdas-adverse-event-reporting-system-faers/fda-adverse-event-reporting-system-faers-public-dashboard
*2 National Center for Biotechnology Information(米国国立生物工業情報センター)が提供・管理する遺伝子発現情報データベース。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/

創薬支援AI「Cascade Eye」

疾病に関係するさまざまな分子・遺伝子等の情報を解析し、パスウェイマップ状に表示。分子・遺伝子間の関係性と全体像、既存薬の有無を可視化し、未知のバイオマーカーの同定や、創薬ターゲット探索プロセスの大幅な効率化、網羅的探索を実現します。(特許登録番号:特許第6915818号)

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