食品開発の「次の一手」をAIで見つける ― KIBIT Amanogawaで拓く、新たな機能性・素材探索 ―

2026年10月14日配信

食品の研究開発では、着目する素材の新たな機能性や、既存の知見だけでは思いつかなかった研究テーマをどのように見出すかが課題となります。論文調査はその重要な手段ですが、検索する言葉や研究者の専門領域によって、アクセスできる情報が限られることもあります。

本セミナーでは、FRONTEOの福島・萩原が、発見型論文探索AI「KIBIT Amanogawa」の概要と、食品研究への活用例を紹介しました。探索のデモンストレーションを通じて、論文の全体像を把握し、新しい研究仮説につなげるアプローチを解説します。

講演者

hagiwara_square   株式会社FRONTEO
ライフサイエンスAI事業本部 ライフサイエンスAI事業推進部 担当部長
萩原 啓太郎
fukushima_square   株式会社FRONTEO
ライフサイエンスAI事業本部 ライフサイエンスAI事業推進部 担当課長
福島 英晃

アーカイブ動画

 

 

 

KIBIT Amanogawaによる論文探索と仮説生成

KIBIT Amanogawaによる論文探索と仮説生成

KIBIT Amanogawaによる論文探索と仮説生成

KIBIT Amanogawaによる論文探索と仮説生成

講演者:福島

非連続的発見による探索範囲の拡張

 

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研究活動では、既存の論文を手がかりに新しい仮説を検討します。しかし、膨大な論文情報を網羅的に探索することや、自身がまだ知らない知見にアクセスすることは容易ではありません。


検索語を設定する段階で研究者の知識や関心が探索範囲に影響するほか、よく知られたテーマや報告数の多い研究対象に目が向きやすいという課題もあります。

 

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FRONTEOが自社開発したAI「KIBIT」を搭載した論文探索AI「KIBIT Amanogawa」では、膨大な論文情報を解析し、単語や各論文が持つ意味を数百次元のベクトルとして数値化しています。入力した単語や文章と、各論文の意味の近さを数学的に評価することで、検索語が直接含まれていない論文でも、概念的な類似性に基づいて提示できます。

 

私たちは、既存の関係をたどって知見を積み上げるアプローチを「連続的発見」、直接的なつながりが示されていない情報から新しい関連性を探るアプローチを「非連続的発見」と位置づけています。KIBIT Amanogawaでは、この2つの発見のアプローチに基づき、キーワードによる探索と概念的な関連性による探索を組み合わせることで、既知のつながりだけでは捉えにくい研究の手がかりを見出せます。

 

食品研究においても、着目する成分の既知機能に加え、異なる領域の研究を参照することで、新たな用途や作用機序の仮説を検討することができます。検索語の一致だけに依存せず、概念的な関連性から探索範囲を広げることが、その起点となります。

可視化による論文群の全体像の把握

 

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KIBIT AmanogawaによるAI探索では、検索語との関連性をもとに、約4,000万報の論文から約2万報の論文を抽出します。

探索結果は、検索語との一致を重視した「Keyword」と、概念的な近さを重視した「Vector」に分類されます。両者が重なり、単語との一致性や概念的な近さのいずれも兼ね備えた領域を「Hybrid」、VectorからHybridが除かれ、より新しい発想を得られる領域を「Discovery」としています。

 

「Keyword」で検索語に直接関係する知見を確認し、「Vector」や「Discovery」で概念的に関連する情報へと視野を広げることで、既知の研究と新しい仮説の手がかりを併せて検討できます。

さらに、「Terms Frequency」や「Word Cloud」など複数の可視化機能を使って論文群の特徴の全体像を俯瞰的に把握し、詳しく確認する対象の論文を選んでいくことが可能です。

 

 

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「Space Map」では、1つ1つの論文がドットとして表現・配置され、論文同士の概念的な近さや、KIBITにより関連性が高いと分類した論文群(クラスター)のまとまりを可視化します。

 

 

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「Terms Frequency」では、分類された各クラスターの内容を把握するために、論文に付与されたMeSHターム※を一覧で確認することができます。

また「Word Cloud」では、クラスター内の論文に含まれる単語の頻度を可視化し表示することで、クラスターごとの特徴を把握できます。

 

※MeSH タームとは、米国国立医学図書館(NLM)が作成する、医学・生命科学分野の統制語彙(シソーラス)のことです。統制語彙とは、言葉の揺れや曖昧さをなくすため、1つの概念に対して1つの代表的な用語を割り当てたものです。

 

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「Card Box」では、「Keyword」、「Vector」、「Hybrid」、「Discovery」の各区分について、関連性の高い上位100報の論文を順に確認できます。

 

 

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またKIBIT Amanogawaでは、単語や文章を入力するだけでなく、概念を足し合わせたり、引いたりすることで探索の方向を調整できます。

例えば「高血圧」と「アンジオテンシン」の概念を組み合わせて2つの概念の関連領域を探すほか、一方の概念を弱めて、別の側面に着目することが可能です。

 

研究者が注目したい概念に焦点を合わせることで、検索語として明確に表現しにくいテーマについても、関連する文献を探索できます。

 

 

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遺伝子と疾患・症状の関連性をリスト化する機能も備えています。

 

遺伝子から関連性の高い疾患や症状を確認するほか、反対に疾患や症状から関連する遺伝子を探索することができます。

こちらはすでに報告がされている関連性だけでなく、まだ報告されていないが関連性の高い情報といった新しい発見も含まれているリストになります。

 

専門コンサルタントによる研究仮説の構築支援

 

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KIBIT Amanogawaの活用にあたっては、専門コンサルタントによる伴走支援も提供しています。

検索クエリの設定や操作方法の助言に加え、お客様の研究テーマに合わせて論文を探索し、簡易的な仮説を作成します。クライアントの研究者の皆様と弊社専門コンサルタント、双方の仮説を持ち寄って議論することが可能です。

 

よくある懸念点として、秘密保持や知財の観点がございますが、クライアントの皆様の検索クエリは保存されておりませんし、弊社AIの学習にも利用しない設計としています。

また相談内容については約款に秘密保持義務を定め、伴走支援を通じて得られた探索成果はお客様に帰属します。こうした仕組みにより、お客様が安心してご利用いただける体制を整えています。

 


研究者の専門知識、AIによる探索、コンサルタントの知見を組み合わせ、KIBIT Amanogawaを通じて具体的な研究仮説の構築を支援します。

 

 


食品研究における機能と成分を起点とした探索

講演者:萩原

GLP-1を起点に機能の探索を広げる

 

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食品研究への活用例として、2つの観点から探索例をご紹介します。


最初の例では、食欲抑制や肥満に関連するペプチドホルモンであるGLP-1を起点に、食品によるGLP-1の制御と健康増進への応用可能性、さらに食欲抑制以外の機能を探索しました。

 

・論文の推移からGLP-1分泌に関わる知見を見出す

 

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まず、検索語との一致性を重視する「Keyword」の探索結果に着目しました。


「Chronological Chart」で論文数の推移を確認すると、GLP-1に関連する研究の増加に加え、近年、論文数が増えているクラスター(Keyword_other)が見られました。

そこで、「Card Box」を利用して該当するクラスターの中身を確認したところ、乳がんやリウマチなど肥満以外にGLP-1が関係している論文が多数確認されました。

 

 

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さらに、食品に関係している論文の一例として、クラスター内では、アルロース(allulose)の投与による腸管の物理的な拡張とGLP-1の分泌に関する論文が見つかりました。この知見から、薬に頼らずにGLP-1に着目した食品設計を検討する手がかりとなります。

 

PubMedの検索では、GLP-1、allulose、腸に関する語を組み合わせたAND検索で得られた論文は3報でした。

報告数の少ないテーマについても、概念的な関連性を用いた探索から知見を得られる例です。

 

 ・肥満の概念を弱めて痛みとの関連を探る

 

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GLP-1に関連する論文には肥満を扱うものが多く、それ以外の機能に関する情報が見えにくくなる場合があります。

そこで、KIBIT Amanogawaの概念の足し引きの機能を用い、肥満の概念を弱めて再探索しました。その結果、「痛み」に関する研究など、食欲抑制とは異なる観点の論文が提示されました。

 

 

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提示された論文では、GLP-1やその由来ペプチドが熱やカプサイシンに反応する痛覚受容チャネルとの関連が示され、マウスにおける疼痛の抑制が報告されていました。こうした知見は、食欲抑制とは異なる作用を検討する手がかりとなります。

 

主要な機能に集中していた探索結果を、概念の調整によって別の領域へ広げられる点は、KIBIT Amanogawaの特徴の一つです。既存の機能を確認するだけでなく、新たな作用機序やヘルスクレーム拡大の可能性を検討する際にも活用できます。

 

短鎖脂肪酸と認知機能から関連領域を探る

 

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2つ目の例では、短鎖脂肪酸という成分を起点に、腸脳相関に着目し、認知機能・認知症に関する論文を探索しました。

 

・概念的な関連性から神経・精神領域へ探索を広げる

 

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認知症と短鎖脂肪酸をテーマとした探索で「Hybrid」の結果を確認すると、PubMedで同様の検索でも見つかる認知症に関する論文に加え、パーキンソン病などの神経系に関わる周辺領域の研究も提示されました。

 

検索語の一致だけで対象を限定せず、概念的に関連する論文も確認することで、異なる研究領域から仮説構築の手がかりを得られます。

 

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さらに、「Vector」の結果では、認知症から神経疾患としての概念を読み取ることで、概念的に探索範囲が広がり、統合失調症/本態性振戦/拒食症など、神経・精神領域のさまざまな病態と短鎖脂肪酸の関連を扱う論文が提示されました。

 

 

・腸内細菌に着目して研究の切り口を広げる

 

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次に、「Terms Frequency」で各論文群に含まれるMeSHタームを確認し、「認知」に関する情報を含むクラスター(Vector_0)に着目して、個別の論文を精査しました。

 

その中で、腸内細菌Akkermansia muciniphilaの投与による短鎖脂肪酸の産生、認知機能の改善との関連を示す論文が見つかりました。短鎖脂肪酸そのものに加え、その産生に関わる腸内細菌にも目を向けることで、研究の切り口を広げられます。

 

 ・アブストラクトを起点に関連研究を掘り下げる 

 

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検索クエリには単語だけでなく、論文のアブストラクトなどの文章を入力することもできます。

腸内細菌Akkermansia muciniphilaに関する論文のアブストラクトを検索クエリに入力し、概念的な関連性の高い論文を探索することで、テーマをさらに掘り下げました。

探索結果には、ADHDの子どもを対象に、炎症や短鎖脂肪酸、食品による介入を検討した研究も含まれていました。

 

 

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また関連論文を比較すると、共通する作用機序だけでなく、介入に用いた食品や研究結果の違いにも着目できます。

こうした違いから新たな可能性を検討し、最初の研究テーマをより具体的な仮説へと発展させることができます。

 

 

・認知症の概念を強めてインドールの作用を探る

 

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さらに、概念の足し引きを使って「認知症」の概念を強め、認知症に焦点を当てた論文を探索しました。

 

 

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注目した例の一つが、インドールに関する論文です。

インドールは腸内環境を悪化させることでよく知られている腸内産生成分ですが、この論文上で報告されているマウスの研究では、インドールによるAhRの活性化や、タイトジャンクションタンパク質の増加を伴う腸管バリア機能の回復、認知機能の改善などが認められています。

 

既存のイメージだけで物質の役割を判断せず、異なる側面を示す研究に目を向けることも、新しい仮説の構築につながります。

 

食品研究の新たな仮説を生み出すために

 

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研究対象の成分や既知の機能に着目する中で、探索の視野が限定される場合があります。

KIBIT Amanogawaでは、概念的な関連性から論文を探索し、その全体像を把握することで、予想していなかった知見に目を向けることができます。

 

私たちは、KIBIT Amanogawaを通じた新たな発見により、お客様の研究の可能性を広げ、研究活動の進展を支援することを目指しています。

 

(講演日:2026年10月6日)