東日本大震災を機に医療データ統合とAI活用の重要性を実感

岩手医科大学 解剖学講座(人体発生学分野) 教授 人見 次郎 氏 インタビュー

■ 医学は記述の学問

━━━ 先生がAIに興味を持たれた経緯をお聞かせください。

私は解剖学を専門としています。解剖学を含め、医学はもともと「記述の学問」です。近年は診療情報などの記録に画像も用いるようになりましたが、原則は医師が患者の状態や症状、現象を言葉で捉え、文章で記録してきました。また、患者の遺伝子情報やゲノム情報、さまざまな検査数値などは、文字・数字情報によって表されます。そのため、医学は膨大なテキスト情報をベースとしているといえます。

東日本大震災後、復興事業の一つである「東北メディカル・メガバンク計画」に携わりました。これは、東北大学・岩手医科大学が中心となり、宮城県・岩手県の被災地域で大規模ゲノムコホート研究*1を行うものです。住民の方々の同意のもと、採取した血液細胞からゲノム解析し、どういった人がどんな疾患になるかを長期的に追跡し、個別化医療*2・先制医療*3を全国に先駆けて提供する基盤づくりに取り組みました。岩手県では3万人超の方々が参加してくださいました1)

同プロジェクトでデータを収集・統合する際に、データの取り扱いや活用方法が課題となりました。そこで、様々な人に相談した中で、現・FRONTEO ライフサイエンスAI CTOの豊柴博義氏を紹介されました。豊柴氏から、医療情報の活用例の1つとして、eQTL(expression Quantitative Trait Locus:発現定量的形質遺伝子座) *4をAIで解析することにより統合失調症を層別化*5できるという話を聞き、医療情報のAIによる解析について大変興味深く感じるとともに、その技術や仕組みは他の様々な疾患にも応用可能だと考えました。

岩手医科大学
解剖学講座(人体発生学分野)
教授 人見 次郎 氏

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