参天製薬株式会社様:FRONTEOとの共創による眼科疾患に対する標的探索のアプローチ

2026年09月03日配信

参天製薬では、「Happiness with Vision」を掲げ、長年にわたり培ってきた眼科領域の専門性や患者ニーズの理解を強みに、世界中の眼科疾患患者のアンメットニーズに応える新たな治療法の創出に取り組んでいます。一方で、創薬を取り巻く環境は大きく変化しており、従来の知見だけでは見つけられない新たな標的を発見するために、新しいアプローチが求められています。
そこで参天製薬は、FRONTEOとの共創プロジェクトを開始。自然言語処理AI「KIBIT」を活用し、眼科領域で培ってきた専門知識とAIを融合した新たな標的探索に取り組みました。

ご講演者

DSC04475   参天製薬株式会社
眼科イノベーションセンター ディスカバリーリサーチ リサーチサイエンティスト
谷口 孝純 様

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AIを活用した背景は「既存の知識だけでは限界がある」こと

 

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従来の標的探索では、論文やオミクスデータ、研究者の経験をもとに候補を検討してきました。しかし、眼科領域には十分な情報が蓄積されていない疾患も多く、既存知識だけでは探索できる範囲に限界があります。

 

そこで着目したのが、眼科領域にとどまらず、他領域の知見まで含めて解析できる網羅性と、これまで結び付けられてこなかった知識から新たな関連性を見いだす新規性を兼ね備えたAIです。

AIを専門としている企業とのコラボレーションによって、これまでとは異なる視点から創薬標的を探索することを目指しました。 

 

AIは答えを出すものではなく、研究者とともに仮説を育てる存在

 

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参天製薬が重視したのは、AIに創薬を任せることではありません。

 

AIが提示した候補を起点に研究者の問いを広げ、妥当性を議論しながら仮説へと発展させていくことをプロジェクトの基本方針としました。 

 

 

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FRONTEOをパートナーに選んだ理由はいくつかあるものの、重要な判断材料となったのは、解析結果を提示するだけではなく、研究者同士が伴走しながら議論を重ねられる体制があったためです。

 

AIの解析と研究者の知見を組み合わせることで、より質の高い意思決定につながることを期待しました。 

 

約4か月で標的探索から仮説構築までを実施

 

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実際の共創プロジェクトでは、まず創薬戦略の整理からスタートしました。

参天製薬では、既存化合物の新たな適応症を探索し、用途特許によるパイプラインを構築するドラッグリポジショニングを創薬戦略の一つとしています。

 

対象とした疾患はオミクスデータが十分に蓄積されておらず、従来のデータを中心としたアプローチだけでは標的探索に限界がありました。そこで今回活用したのが「KIBIT」です。

KIBITは、独自の実験データが十分にない領域でも、膨大な論文情報からこれまで着目されてこなかった関連性を見いだし、新規性の高い仮説を導き出すことができます。この特長を生かし、今回共創プロジェクトに取り組みました。 

 

 

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共創プロジェクトでは、まず対象疾患について研究者同士で詳細な認識合わせを実施しました。どの組織を標的とするのか、どのような薬効を期待するのかといった情報を整理した上でKIBITによる解析を実施し、解析結果については毎週から隔週の密度の高いミーティングによって議論を重ねながら仮説をブラッシュアップしていきました。

 

単に解析結果を受け取るのではなく、研究者同士が継続的に議論を重ねたことが、最終的な成果につながったと考えています。 

 

非連続的発見によって27件の有望な候補を抽出

 

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KIBITによる解析では、まず1,447件の標的候補を抽出しました。


その後、既存薬の有無や眼組織での発現、さらにバイオロジーの観点での妥当性などを段階的に評価し、最終的に27件まで絞り込みました。

 

 

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さらに絞り込んだ27件をPubMedで確認したところ、その多くは疾患や標的組織との関連がほとんど報告されておらず、既存研究では見つかっていなかった新しい候補であることが確認されました。

 

この結果は、KIBITが持つ「非連続的発見」の特徴を示す成果であり、新規性と妥当性を兼ね備えた候補として、現在はウェット実験による検証が進められています。

 

 成果を生んだのは「問いの質」と「解釈の質」

 

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今回のプロジェクトで特に重要だったのは、AIへの入力情報をできるだけ具体的に整理したことでした。

「効く薬を探す」といった漠然とした問いではなく、期待する薬効や標的組織、疾患の特徴まで詳細に共有したことで、AIがより適切な候補を提示できるようになりました。

 

さらに、AIの出力結果をそのまま採用するのではなく、研究者が時間をかけて解釈し仮説へと発展させるプロセスが、今回の成果につながりました。

 

今後の課題は「AIで見つける」から「より早く検証する」
こと

 

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一方で、今回の共同プロジェクトを通じて、今後さらに改善できる点も共有されました。

 

1つ目は、プロジェクト全体のリソース配分です。

AIによって有望な候補を効率的に抽出できる一方、標的を活性化すべきか阻害すべきかといった詳細な検討は研究者による解析が必要であり、こうした作業には一定の時間を要しました。今後は、AIと研究者が担う役割をより最適化することで、プロジェクト全体の効率をさらに高められると考えています。

 

2つ目は、AIによる仮説創出とウェット実験との時間差です。

約4か月という短期間で標的候補を見出すことができた一方で、それらを実験で検証するには時間がかかります。そのため、早い段階で短期のPOM検証実験を組み込むなど、より効率的に候補を絞り込んでいくプロセスが重要になってきます。

 

 

AIと研究者の協働が創薬の可能性を広げる

 

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今回の取り組みを通じて感じたのは、AIは研究者に代わって答えを出す存在ではなく、研究者の意思決定を支援し、新たな発想を生み出すパートナーであるということです。

現在は抽出した候補についてウェット実験による検証を進めるとともに、標的探索以外の創薬プロセスへのAI活用も視野に入れ、新たな共同プロジェクトも始動しています。

 

◇参考:FRONTEOのプレスリリースより

・FRONTEOと参天製薬、共創プロジェクト第2弾を開始 https://www.fronteo.com/news/pr/20260716

 

本プロジェクトの成果を評価につなげ、「Happiness with Vision」の実現に取り組んでいきます。

 

(講演日:2026年7月23日)