二次元マッピングに秘められた可能性を紐解く~可視化された注目遺伝子と疾患・症状の類似性~
2024.03.25自然言語処理AIを使った仮説生成の薬剤性肝障害の新規影響因子探索への応用
2024.05.172023年11月、FRONTEOはAxcelead Drug Discovery Partners社と「AI創薬支援パートナーシップ基本契約」を締結しました。FRONTEOの仮説生成AIとAxcelead DDPの創薬プラットフォーム機能を組み合わせることで、ドライ研究(コンピュータやAIを用いたデータ解析)を通じて仮説を構築し、ウェット研究(細胞、動物などを用いた生物学的試験)で検証するという創薬研究サイクルを効率的に運用するソリューションを目指します。
株式会社FRONTEO
取締役/CTO
博士(理学)
豊柴 博義
早稲田大学大学院 理工学研究科数学専攻修了後、米国国立環境健康科学研究所等で、さまざまなデータの統計解析を用いた研究に従事。2017年よりFRONTEOでライフサイエンスの領域に特化したAIアルゴリズムを開発。テキストのベクトル化という特徴を生かし、現在までに論文探索、創薬支援、認知症診断支援、転倒予測などのさまざまなビジネスをこのアルゴリズムをベースに展開している。2019年よりライフサイエンスAI CTO。2021年には執行役員に就任。AIの社会実装を更に推進する。
Axcelead Drug Discovery Partners株式会社
CSO
伊井 雅幸
薬学博士。1990年 京都大学薬学研究科博士後期課程卒業後、同年武田薬品工業株式会社 化学研究所入社。The Scripps Research Institute, Immunolgy 留学後、Takeda Global Research & Development Inc.勤務、武田薬品工業 海外研究統括室 主席部員、同 炎症疾患創薬ユニット ヘッドを経て、2017年7月よりAxcelead Drug Discovery Partners 統合生物 ヘッド。2022年4月より現職。
【FRONTEOパート】
仮説生成AIによる創薬支援ソリューションでドライ研究を加速化・高度化
自社開発AIエンジンKIBITを活用して新規性の高い標的遺伝子やドラッグ・リポジショニング、その疾患メカニズムなどの仮説を提案する創薬支援サービスDrug Discovery AI Factoryを紹介します。
Axcelead Drug Discovery PartnersとAI創薬事業の創薬支援パートナーシップ基本契約締結
2023年11月、株式会社FRONTEOとAxcelead Drug Discovery Partners株式会社はパートナーシップ契約を締結しました。ドライ研究を通して構築する仮説生成の部分をFRONTEOで担当し、その仮説の内容をAxceleadの技術を使って検証していく流れを想定したパートナーシップです。
どちらかが主導するというより、サイクルを作って協力するイメージです。検証結果をフィードバックさせて次の仮説という風に、お互いの研究者がしっかりディスカッションしながら進める枠組みを作っていきたいと思っています。
こちらが複合サービスのイメージフローです。FRONTEOの方からスタートしたケースを書いていますが、Axceleadからスタートするケースもあります。
最終的には、FRONTEOから出てきたものをしっかりドライとウェットが融合したアウトプットを顧客に提供できればと思っています。
今回は、まずこのドライの部分についてお話しして、その後にAxceleadのプラットフォームについて説明を行います。
KIBITの仮説生成について
FRONTEO独自のAIエンジンであるKIBITを説明するために、ひとつの仮説を紹介します。
「もしあなたが学生時代に書いた作文で、将来アルツハイマー病を発症する可能性がわかるとしたら…」
1986年に始まった修道院での疫学調査において、20歳のときに書いた日記と約60年近く後のアルツハイマー病の発症に相関関係があったと報告されています。
言語密度が低いと判定された修道女の約80%がアルツハイマー病を発症、逆に高いと判定された場合の発症率はわずか10%でした。自然言語が人間の認知や記憶に大きく影響している証だと思われます。
このように自然言語は、まだ私たちが知らないさまざまな可能性を秘めています。自然言語をコンピュータに上手く処理させるために使うのではなく、我々自身を理解するために使いたいという思いから、KIBITは始まっています。
話し方や文章をひとつの表現型として考えると、非常に可能性がある分野だと思います。
ではなぜ、このような差が生じるのか、人はどのように言語を学んでいくのかが非常に興味深く感じられます。
Distributional Hypothesis(分布仮説)
「分布仮説」というものがあります。単語の意味はその周りの単語によって特徴付けられるという仮説で、言語学習における汎化理論をもたらしたと言われています。
例えば、子どもは類似した単語の分布からその使用法を一般化することで、ほとんど出会ったことのない単語の使用法を見つけ出すことができるという考え方です。
KIBITはこの分布仮説に忠実に従っていて、ほとんど出会ったことのない単語の使用法を見つけ出します。
分布仮説に従ったアルゴリズムで、なぜDiscoveryをもたらすことができるのか。文献情報を解析しても新しい情報が出てこないのではないかという質問をよく受けますが、これについては分布仮説から説明できます。
単語はその周りの単語の種類と頻度で特徴付けられるというシンプルな法則のみに従っていて、特にその他の情報を学ばせていないので、KIBITはバイアスを知りません。
研究されている遺伝子の分布
一方で研究者はどうか。この図は縦軸にpublicationの数、横軸に遺伝子数を置いています。左側はpublicationのたくさんある遺伝子、右側はpublicationが非常に少ない遺伝子が並んでいます。
特定の遺伝子に関するpublicationはたくさんありますが、残りの遺伝子については、明らかにpublicationは少ない、つまり研究があまりされていません。
これは確証バイアスと言われるもので、自分の思い込みや願望を強化する情報ばかりに目がいき、知っている分子やパスウェイ、疾患が出てくると、どうしてもそこにフォーカスを当てた仮説を作ってしまい、新規の標的分子を見つけるのが難しくなってしまいます。
非常に新規性の高い、ほとんど疾患との関連性が報告されていない標的を提案してくださいと研究者に言っても、なかなか難しいというわけです。
一方でKIBITは分布仮説のアルゴリズムに従っているので、ほとんど出てこない単語であっても周りに出てくる単語からその使い方を学習します。
言い換えると、ほとんど出てこない遺伝子であっても、周りに出てくる単語からその使い方を学習することで、同じ論文内に記載がなくても、ある疾患に対して関連性・類似性の高い標的を見つけることができるというわけです。
主要な遺伝子に、論文掲載が偏っている
実際に、KIBITでALSという疾患名で探索を行ってみました。左側がPubMed、右側がKIBITで、それぞれトップ100のabstractを探索したものです
KW検索では見つからない、予想外の遺伝子に出会う機会が増える
どのような分子が含まれているかをグラフで見てみると、PubMedではultra major geneが1つあって、major geneが8つ、そしてminor geneと呼ばれるものは4つしか出てきません。
KIBITに同じ疾患名を入れると、半分近くがminor geneで、major geneの数も倍近くになっているので、新規の標的の関わりが上がってくるのが実際に見て分かるかと思います。
また、先日発表しましたSpringer Natureとの提携により、科学誌『ネイチャー』シリーズなど約600の雑誌の全文を使った学習を行うことができるので、これまでのabstractに加えて、本文の中身も使った解析が可能になりました。
これらの情報を使って、我々が今、進めているのがDrug Discovery AI Factoryです。
標的探索の領域は、AIの活用が進んでいない
AIの活用が様々な分野で謳われていますが、ターゲット選定の領域ではなかなか進んでいないのが現状です。まさに我々が加速させたいと思っている部分です
成功確率を担保するには、仮説を生み出し続けることが重要
なぜこの部分でのAI活用が難しいかというと、データ解析の多くがリストの形で出てくるのですが、これだけでは創薬の研究を進めるのは難しいからです。
出てきたリストをしっかり仮説まで繋げていくのが非常に大事であり、我々のプラットフォームの大きな強みのひとつは「仮説を出せる」部分だと思っています。
こちらの図は、左側は単に分子の繋がりをネットワークの形に表したもので、ノードの大きな部分はたくさんの分子が繋がっていることを示しています。
我々が仮説を出す際、左側ではなく、右側のようなものを考えています。しっかり仮説を元にストーリーが展開できるようなものです。
こちらの例だと、PINK1に変異が入るとP38・Aktのリン酸化のバインディングを阻害する。元々、一緒になったこのコンプレックスがNRF2に働きかけて、エクスプレッションを上げて、転写因子に結びつきます。
このように、単に仮説を出すだけではなく、ストーリー展開が行えるのが特徴です。
遺伝子→疾患、疾患→遺伝子をAIが予測する
我々のAIエンジンは自然言語処理が得意なので、例えば遺伝子と疾患の関連だけでなく遺伝子と症状の関連など、様々な関連性の情報を集めることができます。
例えば遺伝子が原因で疾患になるのか、あるいは疾患が原因でその遺伝子の発現が変動するのかというようなこともAIが予測して、原因性と応答性を繋げてくれます。
これらをベースに様々なプラットフォームを構築していますが、例えばこのネットワークでどのようなことがわかるかを説明していきます。
【事例】レット症候群
レット症候群の事例を紹介します。原因性の遺伝子として、MECP2に変異が入るとレット症候群になりやすいことが知られています。
動物モデルでも同じようにKOマウス、コンディショナルマウスは表現型を再現できていますが、MECP2以外にどんな標的を狙うかについて検討するのは難しいと思います。
変異原物質を用いた大規模サプレッサー遺伝子探索
こちらの論文にあるように、MECP2に変異が入った後に、DNA上に変異を起こす化合物であるEMUを暴露させて、MECP2以外でランダムに変異をもう1つ起こさせます。
変異が入ることで表現型が回復したマウスのDNA上のどこに変異がはいったかを調べることで、MECP2に変異が入った際、他にどんな分子をインヒビターとして狙えば表現型が良くなるかを探索できます。
通常、マウスを使うと非常に工数がかかりますし、その中で見つかったものをリストアップするのも非常に大変な作業です。
大規模スクリーニングで見出されたサプレッサー遺伝子
実際にこの論文から見つかったものをリストアップしたのがこちらの表ですが、実際の研究でここまで出すには非常に長い年月がかかります。
AIは複数のサプレッサー遺伝子を捉えた
我々なら10分ほどで、MECP2を原因性としたネットワークを構築することができます。
この赤い丸の部分は、実験で実際に見つかった分子がネットワークのどの位置に現れたかを図にしたもので、括弧内の数字はPubMedで「gene symbol and Rett syndrome」と検索して出てくる論文数です。
2や3など非常に少ない数になっているので、文献だけからこの情報を見つけるのは非常に難しいことが分かります。
サプレッサー遺伝子は流量の多い遺伝子の下流に存在
ネットワークのどこを見たらいいかについてですが、ネットワークのエッジにそれぞれ重みがついていて、それらを見ていくことで簡単に重要視する分子を絞り込めます。
このような形で、新規性の高い分子の仮説を立てて進めることができるプラットフォームです。
バイオロジストが開発したBest Known Methods
この他にも5つのプラットフォームのレシピがあります。すべて、バイオロジストが開発したもの、つまり実際に創薬研究をやった研究者が使えるかどうかという視点で作り上げたものです。
実際の創薬で役立つアウトプットを我々の研究から出して、それをさらにAxceleadの研究者の方々と議論しながらウェットで検証していく枠組みを進めたいと思っています。
本パートナーシップにより仮説生成・Wet検証の一体的な提供体制を構築
もう1度、協業のフローをご説明します。
Axceleadは、ライブラリーから動物の試験まで一気通貫して行えるプラットフォームを持っているので、そこにFRONTEOの情報をインプットして、そのプラットフォームで検証して、さらにフィードバックします。
単に情報をやり取りするというよりは、お互いの研究者が、なぜこの分子が面白いと思っているのか? この研究結果をベースにどんなものをノミネートしていけばいいか?といったところも議論しながら進められるプラットフォームを考えています。
創薬に携わる研究所のチャレンジと課題
このプラットフォームを使って頂きたいのは、新規性の高い標的を選定する場合です。そのほかには例えば、新たな疾患領域を立ち上げる場合や、自社ですでに研究プラットフォームはあるが、新たな領域はアウトソースで行いたいという場合も当てはまると思います。我々2社を使って新たなパイプラインを強化していく場合も使えるでしょう。
標的分子が決まっている場合には、ドラッグ・リポジショニングも同様に我々のプラットフォームで検討することができます。
仮説生成に特化したDrug Discovery AI Factory
まとめです。FRONTEOは仮説生成が非常に得意ですが、そのアウトプットをしっかり検証するために、今回のAxceleadとの協業を進めたいと思っています。
新規性の非常に高いものを、ウェットの結果と合わせながら成功確度をさらに向上させて、より良いものを提供できる枠組みができていくと考えています。
【Axcelead DDPパート】
多様なバリデーション・プラットフォームで仮説検証を加速
AIで生成されたユニークな仮説や創薬ターゲットを迅速に検証することが、創薬の効率化にとって極めて重要です。今回の協業によってDRYxWETのシナジーを生む、Axcelead 社が有する多様な仮説検証プラットフォームの概要を紹介していきます。
Axcelead Drug Discovery Partners株式会社は、2017年に武田薬品工業からスピンアウトして設立された日本初の創薬ソリューションプロバイダーで、これまでに230社以上の契約実績があります。
武田薬品工業から非臨床の創薬機能と人材、インフラ、創薬データを継承した企業で、武田薬品工業だけでなく日本中の製薬会社や研究所から集まった約250名のサイエンティストが知識や経験を結集させてサービスを提供しています。
インフラ、創薬データについては150万の非常に大きなライブラリー、700以上のプロジェクトのデータにアクセスして、過去の経験を生かして顧客の創薬を加速させています。
また低分子とペプチドのスクリーニング機能、薬理動態、安全性、全ての創薬機能を保有していて、早期の探索研究から候補化合物の最適化、さらには臨床開発への橋渡しまでワンストップで統合型のサービスを提供しています。
常に革新的な創薬、医薬品を追求するために、色々な企業や研究所の方々とパートナーシップを組んで、当局とも強力で密接な関係、コミュニケーションを持ちながら創薬を進めています。
創薬における仮説検証のアプローチ
創薬における仮説検証は、多面的にアプローチを行う必要があります。例えばinformaticsの活用や論文からのcurationを行いますが、これはFRONTEOから非常に素晴らしいAIのアルゴリズムを用いて、仮説とともにロジックも提供されることを期待しています。
検証過程においては、ウェットでのアプローチが非常に重要であり、ターゲットの修飾のための各種ツール、ターゲットや目的の疾患に対応したin vitro・in vivoモデルが必要です。また、低分子創薬のターゲットとして妥当かどうか分子自身の評価も行います。このように様々な角度からの評価、検証が必要になります。
仮説を検証するには、3つのポイントがあります。仮説として上がってきた標的分子について、①分子自体の活性の修飾、②その機能(生物学的表現型)の修飾、③病態の改善を確認することです。
そのためには、対象疾患に合ったモデル評価系の選定と適切な評価ツールの選択が重要です。
例えば、細胞を用いた検証では、初代培養細胞を使うのか、iPS細胞を使うのか、癌細胞を使うのか、複数の選択肢はあります。また、動物モデルでも病態モデルは色々あり、標的分子のノックアウト動物を使う場合もあれば、いわゆる疾患動物モデルを使う場合、その組み合わせの場合もあります。標的分子を修飾するための評価ツールも様々で、siRNAやCRISPRによる遺伝子修飾、低分子化合物、抗体等、目的に応じて利用可能なツールを選択します。
Axceleadにおける仮説検証のアプローチ
FRONTEOとの協業における、Axceleadの仮説検証のアプローチを紹介します。まずは、論文や学会、特許、あるいは実際の実験データを使い、AIによって、ユニークで革新的な仮説が生み出されます。その仮説としては、標的分子の場合、対象疾患の場合、また、バイオマーカーの場合も想定され多様な候補が考えられます。
その仮説を検証するバリデーション手法は3つ。①ターゲットの局在や発現情報を調べる病態の関連性検証、②細胞を使ったin vitroアッセイ・機能評価、③動物モデルを使ったin vivoの評価です。病態モデルを使う場合は、ツール化合物を用いて病体が改善されるかを検証し、新たに遺伝子改変動物モデルを作る場合は、その表現型を解析し想定していた変化が起こるかを検証します。
病態との関連性検証:疾患外挿性の高い検証
病体との関連性検証には、疾患外挿性の高い検証が必要です。そのため、ヒトの新鮮血や新鮮臓器を使う事が望まれており、Axceleadではその入手システムを構築しています。
湘南ヘルスイノベーションパークに入っているNPO法人のHAB研究機構と協業してボランティアシステムを構築、パーク内の企業に対して新鮮血の提供を開始しています。
ヒトの新鮮臓器についても、近隣の病院から新鮮組織を入手する仕組みを構築し、ターゲットバリデーションとして、機能の検証を行っています。
なお、新鮮サンプルの入手については、より早くより多様な新鮮サンプルが入手できるよう、常にネットワークの拡大に取り組んでいます。
In vitro(細胞)アッセイ・機能評価~細胞の種類~
細胞のアッセイをまとめると、より簡便には細胞株や動物のプライマリーの細胞を使います。
新鮮サンプルから入手される細胞は、血液からはPBMCやT・B細胞等が採取可であり、また、大腸癌の組織や肝臓の組織から直接採取できる細胞を使って機能評価をする場合もあります。
さらにはiPS細胞由来の細胞を使うなど、複数の多様な細胞を活用して、ターゲットや疾患に応じた検証を進めています。
In vitro(細胞)アッセイ・機能評価~ツール化合物・遺伝子改変術~
検証用には、通常、既存阻害薬等のツール化合物やsiRNA、CRISPR-Cas9などを使いますが、Axceleadが持っている150万の化合物を使った検証が特徴です。
ユニークな標的分子の場合、修飾できる化合物が市販されていない場合もありますが、Axceleadのライブラリーには市販では入手できないオリジナルの化合物が約60%あり、標的分子が分かっている化合物からなるアノテーションライブラリーも整備しています。
また、ターゲットクラス、疾患領域も非常に多様で、酵素、GPCR、Ion channelなど広くカバーしており、疾患領域も癌、循環器、代謝、神経、免疫、中枢など様々な疾患領域をカバーした化合物をツールとして利用できます。
これらの化合物は背景となるデータもありますし、薬として開発を進めたものもありますので、検証できればすぐに創薬をスタートできるケースも想定されます。とても有用な検証用ツールと言えます。
In vitro(細胞)アッセイ・機能評価~細胞を用いた各種評価~
細胞とツールを使って機能変化による検証を行いますが、色々な疾患に対応した細胞機能評価を行っています。
例えば、免疫疾患ならサイトカインの産生や各種細胞の増殖、分化、遊走、癌なら増殖抑制、killingアッセイ等がありますし、
その他、中枢や代謝といった各疾患領域でも適切な細胞機能の評価系を有しており、 疾患や標的分子に応じた細胞、ツール、機能を選んで検証のプラットフォームを提供しています。
機能だけではなく、ターゲットに近いシグナル、阻害や活性化を評価することで、実際に標的が修飾されていることも確認しながら、細胞での機能評価を行っています。
In vivoアッセイ ~ 病態動物モデル~
In vivoでの評価も様々な疾患領域に対応しています。
免疫、癌、中枢、循環、代謝疾患、その他色々な疾患領域に対応しており、例えば免疫なら炎症性腸疾患やリウマチ、癌は各種、中枢なら認知症や精神疾患、循環・代謝も様々な疾患に対応した動物モデルを有しています。
ここに記載していないような疾患・評価系もお客様からの要望で新規の疾患モデルの構築にも対応しています。
左下の円グラフで実際に依頼を頂いた薬理評価の内容を示していますが、新規の評価系を構築するご依頼が増えています。
例:MEK / 炎症性腸疾患治療薬ターゲットの検証:低分子ツール化合物
仮説検証の実例として、低分子ツール化合物を使った炎症性腸疾患のターゲットの検証をご紹介します。
炎症性腸疾患は消化管の粘膜に炎症が生じる疾患で、既存薬では症状寛解までは至っていますが、組織の分子レベルでの治療には至っていません。
遺伝子発現解析してみると、MEKという分子、標的候補がハイライトされたので、このMEKの阻害薬で細胞機能、動物の機能及び組織学的変化を検証しました。
その結果、MEK阻害薬により細胞のバリア機能や下痢の症状が回復、組織学的にも改善しました。
例:GPR40 / 糖尿病治療薬ターゲットの検証
こちらはトランスジェニックマウスを用いた検証例で、高脂肪食を負荷させた糖尿病マウスにおいてGPR40という分子を発現させたらどうなるかを調べたものです。本試験は、GPR40アゴニストの開発のための検証試験であり、GPR40を高発現させると耐糖能が改善することが検証できたので、創薬のきっかけになりました。
In vivoアッセイ~遺伝子改変動物、CRISPR-Cas9~
既存の動物モデルを利用するだけではなく、CRISPRを使って新規の遺伝子改変動物も短期間で作製しており、単純なノックアウト動物だと3ヶ月から4ヶ月で、検証用の動物を提供することができます。
大規模のものでもステップワイズで半年から1年程度でニーズに応じた遺伝子改変動物を作成・評価します。
臓器特異的なノックアウトも行っているので、全身でノックアウトすると致死になってしまうものでも疾患を発症・検証することができます。
既存モデルへの追加遺伝子改変
既存モデルへの追加の遺伝子改変も可能です。
例:PLN KO / CSQ-Tgマウスにおける心機能・生存改善
こちらの例は、心不全モデルのマウスに追加でPhospholambanという分子をノックアウトすることで、心機能が改善できるかを検証したものです。Phospholambamノックアウトにより、生存改善が確認でき、Phospholambamの創薬標的の確からしさを検証できた例になります。
In vltroアッセイ~遺伝子改変動物、ハイドロダイナミクス~
短期間で遺伝子編集マウスを作製する取り組みも行っています。
ハイドロダイナミクスという技術で、遺伝子を動物に静注するだけで目的の分子を発現できるので、短期間で検証用動物モデルを構築しうるプラットフォームです。この例では、ヒトIL-15をハイドロダイナミクスで導入し、10週間以上も一定レベル以上の量のヒトIL-15が発現することができました。結果として、移植したヒトT細胞やNK細胞の生着が確認できており、ヒト化マウスとして活用しうるものと考えています。
総合的ワンストップソリューションを提供
このように、Axceleadでは多彩なアプローチを使っての仮説検証が可能です。臨床サンプルや様々な細胞・動物モデル、オリジナルのライブラリー化合物を使うことで創薬を加速させます。
Axceleadでは、創薬に携わった研究者が検証をサポートしているので、どこを検証したらいいか、創薬につなげるにはどうしたらいいか、常に考えながら行っています。実際の創薬経験をベースにして、仮説を提案、検証することが成功に導く極めて重要な鍵だと思います。
FRONTEOと協力して、ワンストップでソリューションを提供していきたいと考えています。
モデレートディスカッション
Q1.改めて今回の協業の概要と、両社の役割について教えてください
ドライの部分をFRONTEOが、ウェットの部分をAxcelead Drug Discovery Partnerが担う協業です。
FRONTEOは新規性の高い標的を抽出し、非常にユニークな仮説を出せるプラットフォームであること、Axceleadはその仮説をしっかり検証できることがそれぞれの強みだと思います。お互いの研究者でディスカッションを行い、フィードバックを繰り返しながら取り組んでいきます。
Q2.今回の協業の経緯を教えてください。また協業によって、どのような価値が創出できると考えていますか?
ターゲットを選ぶことが創薬の根幹、スタートになりますが、そこにどうしてもバイアスが入ってしまう。これは研究者の永遠の課題でもあります。
その点、ノンバイアスでターゲットを選ぶということに強みを持つFRONTEOと協業して、Axceleadのウェットの検証と組み合わせることで革新的な治療薬が生み出せると考えたのが経緯です。
また、FRONTEOは創薬に携わった人がアルゴリズムや基盤を作っていること、リストやスコアだけでなく仮説を提案できる仕組みを作っていることを強みに感じたことも理由です。
Q3.お客様のどのような課題を解決できるのでしょうか?
創薬仮説は、MOAであるとか、どんな疾患が関連するかとか、どんな患者さんが最もベネフィットがあるのかとか、あらゆるステージで色々な課題が出ると思いますが、それらのご支援ができると思います。
そして、その仮説をどのように検証すべきか、経験豊かなAxceleadのチームと入念にプランニングしていくので、どんな些細なことでもご相談いただけたらと思います。
Q4.今回の協業における、今後の展望を教えてください
革新的医薬品を提供したいというのが、一番の大きな展望です。ドライ・ウェットの区別はありますが、いかに一緒になってやっていくか。ウェットインザループと言いますか、1つのチームとして本当にいいものを作っていきたいというのが展望であり、希望です。
お客様と一緒に、密接に1つのチームになって、ターゲットを見つけて検証していく。我々が気のつかない課題、お客様が気づいていない課題も一緒にディスカッションして進めていくことで炙り出して、解決することができると思います。
Q5.今回の協業の先に、創薬の新会社設立を見据えているのでしょうか?
非常に難しい質問ですが、新しい知財が生まれることはあるかと思いますし、形に拘らず一緒に、何か患者さんに新たな機会、創薬をご提供できたら非常にいいなと思います。ただやはり、まずはお客様の持つ医薬品開発の課題に対する解決策を、一緒に提供していきたいと思っています。
Q6.KIBITは分布仮説に基づいていますが、Attentionメカニズムと共通する部分はありますか?
基本的には異なると思います。分布仮説はベクトル化する部分でよく用いられる理論で、Attentionはそのベクトル化した後に、この単語がどんな風に関わっているかというもので、むしろニューラルネットワークの中のアーキテクチャーの中でよく使われるメカニズムなので、性質は異なるかと思います。
Q7.ターゲットを選ぶ際の創薬確度(確からしさ)はデータサイエンスの時点で、どの程度担保するのでしょう?
AIは関わりの深さを数値で出してくれるので、まずはAIがプライオリティを付けたものを見ていきます。その後に、フィジビリティやドラッグアビリティなどを研究者で精査して、最終的には確からしさを担保して提案します。
Q8.KIBITの仮説生成は無限の可能性があると考えます。今後この仮説は、AIとヒトの役割をどのように変えていくのでしょう?
創薬においては、特に検証をどうやって行うのかなど、実験のフィジビリティにおいてヒトの持つ知見・経験が非常に大きく影響しますし、それで得た結果をAIにフィードバックすることで、確度は上がってくると思います。ヒトとAIが一緒になって、初めて本当にいいものが出てくると思います。
Q9.この協業については、どちらの会社に問い合わせればいいですか?
どちらでもウェルカムです。非常に密にコミュニケーションを取りながら進めておりますので、声をかけやすい方にお問い合わせいただければと思います。