「AI×自然言語」が実現する患者の尊厳に配慮した認知症検査慶應義塾大学 医学部 精神・神経科学教室 教授慶應義塾大学病院 副病院長 三村 將 氏
2022.03.13FRONTEO、AI医療機器・ヘルスケアソリューションの AWS上での展開に向けた開発を開始
2022.03.16インタビュー
AI導入によりアセスメントの質向上と看護負担軽減を実現
医療法人社団誠馨会 セコメディック病院 医療安全管理室長 小諸 信宏 氏
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概要
医療法人社団誠馨会セコメディック病院は、FRONTEOの転倒転落予測AIシステム「Coroban」を2019年より試験導入、2020年より正式導入し、入院患者の転倒転落予防に活用しています。医療安全管理室長の小諸信宏氏に、医療機関における転倒転落対策の実際と導入の経緯、活用の効果についてお話しいただきました。
■ 高齢化の進展でほとんどの入院患者が“高リスク”に
━━━ 病院の概要をお聞かせください。
セコメディック病院は、千葉県船橋市の北東部に位置する、セキュリティ会社のセコムの提携病院です。許可病床数は292床で、24の診療科を持ち、看護配置基準7対1の急性期病床のほか、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、併設の訪問看護ステーションなどを備え、急性期から回復期、在宅医療までシームレスな医療を提供する、地域の中核病院です。800人弱の職員が働いており、医療安全管理室は院長直轄組織で、看護師・薬剤師など多職種からなる10人のメンバーが病院全体の医療安全管理を担っています。
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関連資料
概要
医療法人社団誠馨会セコメディック病院は、FRONTEOの転倒転落予測AIシステム「Coroban」を2019年より試験導入、2020年より正式導入し、入院患者の転倒転落予防に活用しています。医療安全管理室長の小諸信宏氏に、医療機関における転倒転落対策の実際と導入の経緯、活用の効果についてお話しいただきました。
■ 高齢化の進展でほとんどの入院患者が“高リスク”に
━━━ 病院の概要をお聞かせください。
セコメディック病院は、千葉県船橋市の北東部に位置する、セキュリティ会社のセコムの提携病院です。許可病床数は292床で、24の診療科を持ち、看護配置基準7対1の急性期病床のほか、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟、併設の訪問看護ステーションなどを備え、急性期から回復期、在宅医療までシームレスな医療を提供する、地域の中核病院です。800人弱の職員が働いており、医療安全管理室は院長直轄組織で、看護師・薬剤師など多職種からなる10人のメンバーが病院全体の医療安全管理を担っています。
━━━ 医療安全管理における状況や課題はどのようなものでしたか。
当院の入院患者の約9割は65歳以上の高齢者で、平均年齢はおよそ75歳、認知機能の低下がみられる患者も約半数に上り、転倒転落予防は医療安全管理における重要課題です。
Coroban導入前の転倒転落対策におけるリスクアセスメントは、身体的機能障害・精神的機能障害・活動状況・薬剤の服用・排泄の頻度・当日の状態について評価項目が設けられており、それらをチェックすることでアセスメントスコアが算出され、転倒を起こす可能性がある(危険度Ⅰ)・高い(同Ⅱ)・非常に高い(同Ⅲ)の3段階に区分される仕組みでした。評価は入院時と、その後は週1回を基本に、何かイベントが発生した際に行い、これに基づいて看護計画を策定していました。
一方、これらを運用する中で、「アセメントの限界」「転倒転落が減少しない」という2つの課題がありました。
アセスメントの限界とは、高齢患者が多いことから、9割以上が危険度Ⅱ・Ⅲと評価され、高リスク者の抽出としては意味をなさない、評価が形骸化された状態になってしまっていたことです。また、転倒の有無とアセスメント結果の関連を検証したところ、有意差がなく、手間や労力がかかる半面、必ずしも実際のケアに資する評価となっていないことがわかりました。本来は高リスクである危険度Ⅱが、相対的に低リスクとみなされ、結果、転倒転落事例に結び付いてしまうこともありました。とはいえ、看護師の努力だけで転倒転落リスクを防ぐのには限界があります。例えば、50床の病棟では45人の患者が高リスク者となりますが、看護師は日勤6~7人、夜勤は3人でこれに対応しており、大きな負担がかかっていました。
■ AIとCorobanの魅力
━━━ 実際に導入していかがでしたか。
Corobanは、看護記録から個々の患者の転倒転落リスクを9項目で評価してスコア化し、レーダーチャートで示します。スコアが閾値以上に達するとアラートが発出されます。病棟の入院患者を一覧表示する画面では、「転倒注意」ボタンをクリックすると、アラートの出ている患者のみを抽出・表示します。
従来の転倒転落アセスメントスコアとCorobanの評価とを比較したところ、回復期リハビリテーション病棟の全入院患者について、転倒転落アセスメントではすべての患者が危険度Ⅱ・Ⅲに該当、つまりアラート発報率が100%でしたが、Corobanによるアラート発報率は59.0%で、約4割減少し、対策が必要な患者の絞り込みが可能となりました。この4割の患者は退院までに転倒転落の発生はなく、質の担保ができていると考えられました。また、予測精度(捕捉率)は従来の看護師によるアセスメントは96.03%、Corobanは96.41%で、同等の水準であることが確認できました。Corobanは看護記録に基づき毎日評価がなされるため、タイムリーな状況確認や対応ができる点もメリットです。
━━━ 看護師の業務負担についてはいかがですか。
軽減しました。当院では看護師1人当たりの受け持ち患者数は6~10人で、従来の転倒転落アセスメントに要していた時間は患者1人につき3~5分、週に換算すると18~50分プラス週1回のカンファレンスを行っていました。Coroban導入により、月43.2時間の削減につながりました。これは人件費に換算すると月約12.5万円、年間約150万円に相当します。
■ 医療安全対策は職員の安全・安心も守るもの
━━━ 現場の看護師のCorobanへの評価はいかがでしょうか。
とても嬉しかったのは、試験導入から正式導入に移行するかどうかの議論をした際に、現場から「Corobanがなくなるのは困る」という声が多く上がったことです。Corobanが病棟で不可欠なシステムとなり、現場のスタッフもそれを実感していることがわかり、導入してよかったと思いました。半面、課題は、現状では病棟により活用状況に差があることです。活用している病棟ではCorobanへの評価が高く、成果も数字に表れていますが、十分に使いこなせていない病棟もあるのが現状です。そうした病棟でうまく使ってもらうためのアプローチが課題です。
━━━ 最後に、読者へのメッセージをお願いします。
当院では、Coroban導入により、転倒転落予測率は向上し、転倒転落発生率は低下、看護師の業務負担は軽減しました。業務負担が減れば、看護師は他の業務に時間や労力を充てることができ、患者へのよりよいケアの提供につながります。
転倒転落対策やアセスメントに不安を抱えている施設は、まずはこうしたシステムを入れてみて、使ってみることをお勧めします。もちろん、導入すれば自動的に転倒転落がなくなる訳ではありませんが、より有効な転倒転落対策を考えるきっかけになるでしょう。
また、私が医療安全対策に取り組む上でもう1つ念頭に置いているのは、医療機関においては、患者だけでなく、職員の安心・安全を守るのも非常に重要だということです。職員は、多忙を極める医療現場で、常に緊張感を持って自分たちの責務を果たしています。しかし、それが疲労感やバーンアウトにつながる実情もあります。さらに、アクシデントの当事者になった職員は、自らを責め、大変つらい思いをします。人間の対応には限界があり、事故を完全に防ぐことは困難ですが、患者や家族は「専門職がみていたのになぜ」と感じ、職員や管理者はいたたまれない気持ちになります。
AIとの協働により、こうした事態を防げるのであれば、患者と家族・職員・地域社会の皆にとって“三方良し”となり、利用しない手はありません。AIと人は、同じ目的に向かって取り組んでいくパートナーです。今後、医療現場で役立つAIがさらに普及・浸透していくと良いと思います。
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